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日本人を裁く「空気」 〜 その3〜

ジョージ・クルーニーは言う。
“I know what pisses people off about fame. It's when famous people whine about it. ”
(知名人は人をムカッとさせるものがある。それがなんだか、私にはよくわかっている。知名人だってつらいんだよ、というぐちを耳にした時だ)

まるで禅坊主に近い悟りだ。
私自身、これまでの人生で、多くの美女と会ってきた。そんな美人の一人が、どんなセリフを使えば私をムカーッとさせるか。読者なら想像できるだろう。

「私って、不幸。この顔が大きらい。この顔(美人)のために、どんなに不幸に遭ったか、あなたにはわからないでしょう」
ムカーッ。美人が絶対口にしてはならぬタブー発言だ――吉本興行の新喜劇で使われる美人のセリフを除いて。「私は、芸も何もできません。歌も踊りも。美人であることしか取り柄がありません」。よくぞ言った。この逆転の発想がバカ受けした。

ジョージ・クルーニーもこのことをよく知っている。
映画スターの地位に安住するコツは、人が何を考えているか、空気を読むことだという。それは、人に叩かれる前に、自分を叩いておくことだ。人ではなく自分自身をからかう(make fun of oneself)ことだ。

『噂の眞相』の岡留元編集長が言いたかったのはこのことだろう。小林よしのりの正義づらが耐えられない岡留氏は、「打たれたままでいいのに、なぜ打ち返すのか」という。裏のメッセージは、殴られ甲斐がある人物だから、じっと耐えていれば、それこそメディア人間にとり、存在感の証明ではないか、ということだろう。

有名人はじっと受けて立つ。人々のシャーデンフロイデは空気を代表する心情だから勝てるものではない。ドンキホーテにとり、風車こそ、日本人にとり最も手強い「空気」なのだ。非難中傷に負けないのが、メディアで勝負する人間の心構えであろう。

その4につづく

2008年5月20日
紘道館館長 松本道弘