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ドサ回り芸人の眼 〜 その4〜

佐渡は貧乏な島。しかしホームレスは見たこともない。なんとか食っていける島なのだ。尾根瓦張りの職人、英会話の塾、リンゴ農園で働く農夫、ジェンキンスさんのお守り役(ベビー・シッター)―― みんな趣味で英語をやっている。

英語が巧くならなくても、食っていけるから、悲壮感がない。どうして自給自足でやっていけるのか。そこに、私は「祭り」のロジックを見た。
民俗学者としての卵である私は、ふと椎葉村体験を思い出した。

あの山奥の村のそのまた奥の貧民村では、いまでも神楽をやっている。
椎葉神楽は、マスコミや観光客を意識した高千穂神楽と較べて、遥かに貧弱だが神楽の数は増えている。なぜか。

墓地に眠っている、民俗学者の柳田國男がその事情(わけ)を語ってくれる。
「それはね、経済的な理由だよ。古代の日本人の労働は<祭り>のためだったのだ。祭りの経済効果こそ、日本のエンジンなのだ」と。

佐渡には、鬼太鼓(オンデコ)がある。全島挙げての村祭りがある。出雲発の隠太鼓(おんだいこ)、そして世阿弥の能、そして金銀山労働者が、自然発生させたオンデコ――。
再び、私は「鬼」の研究を始める。

鬼がわかれば、日本がわかる。
かつて「英語の鬼」といわれたこの私も、「悪魔」(デビルとサタン)の研究を始めたことがある。英国文化を理解するには、悪魔の正体を知る必要がある、と多くの知識人から聞かされていたからだ。

徹底的に悪魔の研究を始めると、一神教文化の奥義に触れ、いずれディベートの源流に近づくことになる。
神と悪魔がタテではなく、ヨコになれば、debateという知的遊戯を演じることができる。ところでディベート不在の日本で悪魔に匹敵するものはあるだろうか。

「ない」のである。鬼? 違う。天皇とは反対の方向に位置する鬼は、日本文化の「裏」である。表を正統とすると、裏はアン・オーソドックスである。
だから、異端児・松本道弘の説くナニワ英語道は鬼のそれであって、悪魔のそれではない。そして、それなりに評価を受けている。恐れられ畏れられているのも、私が大衆の味方の鬼という仮面をつけているからだ。
25年ぶりにNHK「英語でしゃべらナイト」に再登場した時も、鬼の仮面をはずさなかった。

2008年5月9日
紘道館館長 松本道弘