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空気が裁く日本 〜 その4 〜

今にして思えば、これもディベーターとして名乗り出した私からの反論を封じる小賢しい工作であったのかもしれない。

どちらも面子だけは失わせたくない。
しかし勝負はついていた。佐伯氏の勝ち。

朝方、白髪の山本七平氏がうらめしそうな表情で私の夢の中に現れた。
「松本さん、あの記事は書かないで下さい」哀願される山本氏はまるで幽霊。
「…いえ、もう判定は書きました…。今日提出します」
はっと、目が覚めた。「夢だったのか」

身を切るような思いで、判決文を『人と日本』誌に提出した。山本七平敗北!
佐伯陣営は勝利に酔った。しかし私は落ち込んだ。尊敬する知人を失った。

もう裁かない ―― 。
この判決を知って、雀躍した論客がいた。山本七平氏の屍を狙うハゲ鷹が。
朝日新聞のホンカツ(本多勝一記者)である。氏は喜々としてペンをとり、『ペンの陰謀』を一気に書き上げた。

山本七平氏を同書の中で、これでもかこれでもかと論難する。死者にムチを打ってはならない。私は「宣誓論争」に限定して裁いたわけで、ホンカツ対山本七平との論争に触れたことは一度もない。

山本七平氏に対しては、彼の死後も、尊敬の念を失ったことはない。
敗北を認めることは、品格の喪失につながらない。かえって人間の品格を高める。higher-selfだ。山本七平氏は、私の判決に不満の意を表したことがなく、私を逆恨みすることもなく、正々堂々と闘われ、散った。むしろ、私の氏に対する評価は高まった。

それに対しホンカツは、私の引用を、自説を有利に導くためにひん曲げるなど、ディベーターとしての品格を疑わざるを得ない。

その5につづく

2008年3月7日
紘道館館長 松本道弘