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遊読(Ludic Reading)の勧め 〜 前編 〜

タイム誌でludic readingなる表現に出会った。
速読でも精読でもない「遊び」の読書である。
私は「遊戯人間」(ホモルーデンス)を自認している。

「ルーディック」とは、ラテン語の「遊び」の形容詞である。最高の遊びは、死に結びつくから、そこでは真剣さが試される。
愛(アモーレ)が死(モルテ)と結びつくことを、遠藤周作の『恋することと愛すること』で知った。

私がまさか、こんな軽い文庫本を、と真面目な人の多い松本ファンなら驚かれるだろうが、こういう心境の変化も、事の成り行きで起こるものだ。
雪の越後湯沢で泊まった宿が「高半」。なんと川端康成が『雪国』を書いた旅館である。

そこで仮説が生まれた。
恋愛のスタイルは、血液型タイプによってまちまちだろうが、環境が愛情表現の方法に、より顕著な影響を与えるのではないか。

雪国は、耐え忍ぶ愛を育むのでは…。
淡雪は恋であって、すぐに融ける。しかし根雪の愛は深く、いったん点火すると、消えない。一年ぐらい待つホットな愛となる。

小説『雪国』に出てくる駒子(岸恵子が演じる)のモデルは、松栄という「高半」の芸者であった。川端康成が扱った「愛」は、恋心が点火すればメラメラと燃える、激しい雪国の恋愛模様ではなかったか。

店頭で手にしたのがこの本 ―― 遊び心がなければ読む気になれない。
この本、考えさせられるところが多く、速読できない。
恋することは快楽。快楽は状態であり、幸福とは行為である。深い。

一言一言、味がある。新幹線の窓から雪景色を見て、考え込む。
新潟県は豪雪地帯に近いほど、離婚率が低くなるという。

雪の降らない大都会へ戻ろう。

…つづく

2007年12月25日
紘道館館長 松本道弘