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〜千の風になって〜 その6

変形菌戦略とは我ながら巧く言ったものだ。
粘菌は強い。年金など必要としない。自給自足ができる。

形を恐れない。甦ることを知っている。初めもなければ終りもない。
ゼロに始まり、ゼロに終る。

ある時は、動物界に。ある時は、植物界。ある時は、鉱物界 ―― そしていつもは菌界かプロチスタ(原生生物)界か、モネラ(細菌)界にいる。正体不明。
熊野という磁場には、こういう生き物が多い。

胞子からアメーバ状の細胞(粘菌アメーバ)が生まれるというから、カビやキノコと違うし、バクテリアとも違う。
それに、接合子が細胞分裂せず、核分裂のみを繰り返して無数の核を持つ大形アメーバ(変形体)に成長していくというから、まるで水木しげるの妖怪の世界だ。

霊、霊、霊。拙著『日本の気概』で述べた、日本の気概≠フ原点を粘菌に見いだす。
南方熊楠の生涯を描いた、水木しげるの『猫楠』には、涙が出るほど笑った。
しかし、読み終わると酔いが醒め、背筋が寒くなる。やはり、熊楠は妖怪だ。巨大な化け物だ。巨大な永久磁石だ。

私が及ぶ相手ではない ―― よほど狂わなければ。
私も変人や奇人で通っているが、彼のような狂人や天才ではない。
いわば、向こう見ずな鉄人の域から出ない風来坊だ。

熊野は人の魂まで甦らせる霊地である。熊楠を甦らせるのは、狂人学者でなければならない。誰かいないか。

神島(かしま)の緑の植物群を死守してくれた大恩人・熊楠を環境の守護神として甦らせようではないか。
照葉樹林帯を戻そう。本物(根のしっかりした)の木、本物(哲学のしっかりした)の人を育てながら、私自身が、熊楠のように強くなってみたい。

2007年11月20日
紘道館館長 松本道弘