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「青い糸」第2章 11より 
秘花は究極のエロチシズム ― その(4)

自分の野心とか、自己実現のための戦略とは、人に見せてはならないものだ。
秘すれば花。
『Love and Will』(Dell)の著者であるRollo May博士は同書の中で述べる。
Eros is the yearning in man which leads him to dedicate himself to seeking arete, the noble and good life. (P.73)
(エロスは高貴で善良な生活を求めるために身を焦がす男子の熱望)

これは私の訳である。今は男女平等の時代だから、どこかの男女同権論者から「このmanは男ではなく、人間のことだ。All men must die. はあらゆる人のことじゃありませんか」と、クレームがつきそうだが、敢えて私は一般論でいく。

品格は男。国を守る気概も男。大臣になることが、「女の本懐」という発想は私の中にはない。
もし、高貴な生活の追及が男の本懐なら、このerosは品格になる。私がかねてより、「品格」と同時に「気概」も必要だというのは、両者の共通分母がerosであるからだ。

「公益のため」というのはerosが内存する創造性のことであり、sexにはそれがない。このようにerosをsexと対比させるとその違いはより鮮明になる。
Sex is a need, but eros is a desire. (性交は欲求、しかしエロスは欲望)

品格だけの品格なら、それはsexという名の快楽に過ぎない。エロスは、その原点にある創造性を伴う欲望である。だからもっと根源的である。
気概はしたがってerosである。

「品格」の藤原正彦と、「気概」の松本道弘がディベートをするとすれば、肥沃な交接を熱望するeroticismを共通分母としなければ不毛になる。ディベートは、本来肥沃な(erotic)精神風土でしか実現しない受精現象である。

その意味で妙花を約束するdebateは、eroticismと同種である。弁証法でいう止揚(アウフヘーベン)とは、生物学的にいえば、受精、心理学的にいえばお互いに高め合う(draw each other upward)ものである。人をしてメロメロに昇華させる。物理的にいえば、気体化現象といえよう。

ゲーテはそんな難しいことはいわず、女とはそういう存在だと捉えた。こっちの方が判りやすい。
女に限定するとsexになるが、限定しなければerosになる。神風特攻隊は、究極のエロスである。

オルガスムスが経験できないと病状を訴える不感症の患者に、それを経験させる、最もてっとり早い方法は、死の恐怖を体験させることだ。精神分析医は要らない。
今、ヘア・ヌードやポルノの時代。アダルトビデオが氾濫し、性風俗はますます淫靡化する。カップルをしてsexlessにさせる。

eroticism(秘花)が消え失せていく。一方的な愛(loveのこと)が解放されると、ポルノが解禁され、erosの花は萎む。文明が文化を踏み躙っていく。

秘花は究極のエロチシズム ― その(5)へ続く

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2007年10月23日
紘道館館長 松本道弘