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オッパイ・ジョークで失敗!
昔の皇室には、乳母(めのと)制度があった。生母にかわってその子に乳を飲ませ、育てる女のことで、英語ではwet nurse という。民主化された今の皇室では、民間人と同じく両親が自分の子供を育てる自己責任のルールがまかり通るようになった。自分の子供の教育は難しく、できれば他人に任せたいというのが多くの人のホンネなのだが、どうもしっくりいかない。
明治の人は、人の子供も叱った。今でも海に囲まれた島の人はそうだ。横浜にある橘学苑は、メザシ(質素のシンボル)で有名な土光敏夫を育てた明治の肝っ玉母さん(登美)が創立した由緒ある学校である。最近そこで講演を頼まれた。中高生と先生方の前で、明治の母について語った。当時、電車の中で赤ちゃんが泣いたら、隣のおばさんがおっぱいを出して飲ませてくれたものだ。お乳を求めて泣いているのに、黙っている方が恥ずかしかった時代だ。私の長兄が泣いた時があった。お乳が出ずに困った私の母は、隣のおばさんの厚意に甘えておっぱいを借りたのだが、兄はその乳首を口にしても、舌ざわりが違うのか、がんとして吸おうとせず泣き続けたという。ところが私の場合は、誰のおっぱいでもおいしそうにチュウチュウ吸っていたというから、母も呆れたという。
ここまでは微笑ましい話だ。先生方にも受けていた。そこで私も悪ノリしたのか、言葉がすべった。「それを聞いた大阪出身の悪友が、「今でもその癖が続いてるのとちゃうか」と言った」とジョークを飛ばす!生徒たち(女学生が9割)はシラーッとした。すべった――。ここは大阪ではない。文明都市横浜なんだ。いや、理由はそれだけじゃなさそうだ。
その時、同席していたNHK の某ディレクターは、「あれは、夕方。そして先生の前だけにしておいた方が…」とクールにコメントしてくれた。女副校長は、「私は楽しかったわ。微笑ましい情景が伝わってきました」と。しかし国語担当の女の先生は、「今の学生は、おっぱいと聞いて、卑猥な感じがしたのでしょうね。週刊雑誌の写真で見るものみたいに…私たちが古文の授業で学んだ垂乳根(たらちね)の…という満ち足
りた母親像がイメージできないのでしょう」
先生方だけでの夕食会(反省会?)では、アルコールが回ったのか、あのオッパイ・ジョークがおかずになった。舞台に立てば必ず笑いととると、自信に満ち満ちていたこのedutainer(教育娯楽家)も、この日の夜だけは寝つきが悪かった。
2006年11月4日
紘道館館長 松本道弘